ghost borders line

まとめて書く用

雑記

震災後、初めて里帰りしてきた。東北ほどではないけれど、あちこちにブルーシートが目につき、その傷跡がまだ残っていた。

古い友人たちの挨拶は一部?半壊?全壊?で、国から支給される補助金の額を聞いている。ちなみに全壊で300万だそうだ。到底足りる額ではないが、出るだけマシと言ったところか。

墓参りを済ませ、無事の確認と震災見舞いをかねて何人かで飲みに出た。

10日前に生れた娘の話。30年以上生きたオレ達は寿命が縮んでも構わないが、子供たちと若い連中には長生きして欲しいと誰もが口を揃える。放射性物質と食べ物の話。気にはなるが、どうにもならないので普通に食べている。避難したところで、職が見つかる保証は無い。それでもなおオレの目から見ると点在する大型スーパーマーケットの品揃えは、オレが行ったどんな国のそれよりも数が多い。海外では高級デパートに行かないと手に入らないないようなものが、地方のごく普通の大型スーパーで手に入る。日本の底力を見たような気がした。

連絡が取れない親戚の話。長く住めばそれだけ親戚も増え、当然福島にも大勢住んでいた。現在避難生活を送る彼らはまだマシで、いまだに連絡が取れない人たちもいる。きっと津波で持っていかれたんだろう、墓も福島原発のすぐ近くのために立ち入り禁止で盆にも関わらず墓参りにも行けやしない、そう冷静に話す友達が印象的だった。

実家に帰ると母が身辺整理をしていた。ずいぶんと物が減り、家が広くなったような感じを受けた。それとこれは妹から聞いた話だが、遺影を準備していて「ここにあるからね」と教えられたという。心筋梗塞、震災、73という歳。いつか母もいなくなるという現実を、オレは分かっていたつもりで、結局なにも分かっていないのだ。それを迎え入れる準備をするために淡々と行動し、オレが動揺するだろうことを見越して、妹にしか伝えない母の極めて現実主義的な一面とその強さを目の当たりにして、やはりオレは動揺するしかなかった。

父は77歳。会社を新しく興して絶賛人生挑戦中。一方、母は上記。男と女というのは、ここまで違うのか。だが両人共に深く尊敬すると同時に、オレには無理だな…という諦念にも襲われた。

齢33にしてオレに姉がいるのが分かった。看護婦らしい。一番上の兄は神戸でこの間結婚したらしい。下の兄は放浪中らしい。全て妹から聞かされた。相変わらずオレは蚊帳の外で、どうにも家族という縁が薄いのであった。いやそれとも単に無知なだけか。知らなかった事実というのは、不意打ちに近い飛び道具のようなもので、構える間もなく心に突き刺さる。言い難いのは分かるが、今から切るぞ!と身体を切られるのと、後ろからナイフが飛んでくるのでは、やはり覚悟が違う。今さらながら意外と自分が信用されていないのを感じて、いつもより少し早いペースで酒を飲んだ。

そして牡蠣にあたって3日寝込む。

やっぱオレ、嫌いだわ、牡蠣。