ウサギと晩酌
ヤツはカリカリ、オレはカラムーチョが肴。といっても彼はケージの中でじっと虚空を見つめているだけなのだけれど。
なるほど、ウサギという奴はなにを考えているのか、本当にさっぱり分からない。預かってからのこの数日、オレは餌を給仕するだけのオートマトンで、彼は特に自己主張するわけでもなく、ひたすら餌を食み、水を飲み、排泄するだけで、オレの呼びかけに答えることもなく、その漆黒の瞳はオレをすり抜けまるで異次元を見据えているようだ。
30㎝ x 30cm x 30cmが彼の世界。
ありきたりだが、ふと彼は幸せなのだろうか?と感じた。せめて動物園にいれば、仲間と一緒に運動も日光浴もできるだろうに。それが果たして幸せなのかは分からないが、それでもそのケージの中よりはマシに思える。
いやそれは人間も同様か。相対化は幸せを定義しないし、30㎝ x 30cm x 30cmがこの宇宙に変わったところで、なにが変わるわけでもない。
ま、とりあえずお前もこのビール飲んでみ。うまいから。